床下は目に見えない部分なので、どうしてもリフォームの優先順位が低くなりがちです。最近は地震などの自然災害が頻発していることから、ようやく基礎補強や床下環境の重要性が少しずつ認知されてきました。
ほとんどの方は暗く、狭い床下に入って自分で点検をするということをしませんが、お家の現状把握のためにも本来は1年に1回は点検することをおすすめしています。普段見えない重要なことが見つかるかもしれません。
こちらの記事では、床下点検をおこなわなければならない9つの理由や、自分で床下を確認する方法や注意点などをご紹介しています。
はじめに・・床下点検は築何年から必要?
「築浅でしばらくは何も問題ないから床下点検も必要ない」と考えていませんか?
確かに築20年以上経っているお家と比べると不具合は少ないかもしれません。しかし、築5年を過ぎてきたら点検をしたほうが良いでしょう。
というのも、最近のシロアリ予防の薬剤はどれも大体5年ほどで効き目が切れてしまうからです。ベタ基礎だからとか、新築だからシロアリが発生しないわけではありません。
シロアリの被害に一度遭えば、目に見えないところで確実に被害が進行していきます。気が付いたときには床下から柱を通り、2階まで達していたという話も少なくありません。
そうならないためにも、定期的な点検が必要となってきますので、できる方は以下を参考に自分で点検してみるのも良いかもしれません。
いざ床下点検!
床下点検に入るときの格好は?
- 汚れてもいい服や靴
まず、汚れてもいいつなぎや長靴を用意してください。床下は匍匐前進のように這ったり横になりながら進むため、つなぎの中もほこりが入りますので、下に着る服も汚れていいものにしてください。つなぎがない場合は、長そで長ズボンの物を選ぶようにしてください。 - 軍手
床下はホコリや土がすごいので、軍手をつけるようにしましょう。所々でクモの巣や虫がいるかもしれませんので、軍手ならまだ気にならないかもしれません。 - マスク
上でも書きましたが、床下は砂埃がとてもすごいです。アストロホームでは防塵・防毒マスクをつけますが、一般のお家にはないと思いますので、不織布マスクを必ずつけてください。また、目にも砂埃が入ってくるためゴーグルがある場合はあわせて着けると良いでしょう。 - クラックスケール
基礎のひび割れの幅を測る道具です。どれくらい基礎が劣化しているのかが客観的に数値で把握できるものになりますので、1年に1回数値を記録しておくと、今後の補修計画に役に立ってきます。 - 懐中電灯
床下は暗いため、懐中電灯を必ず持っていきましょう。這って進むため、ヘッドライトの方が手を開けられるので、何かと便利です。 - カメラ
現状の記録を写真で残したい方はカメラも持っていってください。ただし、カメラを素のままで持っていくと隙間に砂埃が入って壊れる原因になるため、透明な袋に入れて使用するほうがいいです。レンズが伸びるタイプは特に壊れやすいので注意が必要です。
床下点検でのチェック項目は?
点検のおおまかな流れはこちら
床下を点検する場合は、大きく次の流れで行うと良いでしょう。
- 服や床下への持ち物を用意する。
- 床下点検口の位置と家の向きを再確認し、進む方向をある程度考えておく
- 床下の点検を行う
- 汚れた服を片付ける
- お風呂入る
通気口がないお家は、外の景色が見えないため自分がどの方角に向いているかがとてもわかりにくいです。そのため、進む道と戻る道を常に意識しながら進むようにしてください。
また、点検が終わったら相当ホコリがつくため、服などを片付けたらそのままお風呂に入れるように準備しておくと、家の中が汚れなくなります。
床下点検時のチェックする場所は?
- 床下の湿度
- カビの有無
- シロアリ被害の有無
- 基礎コンクリートのひび割れ
- 断熱材の状態
- 配管の水漏れ
- 床束・束石の劣化
・床下の温度
床下の湿気は、さまざまな被害の元凶となってきます。カビ、木材を腐らせる腐朽菌の発生やシロアリ、コンクリートの劣化などで悪影響を及ぼしますので、現状の把握が必要です。床下の湿度は床下換気扇や調湿材で緩和することも可能です。
・カビの有無
床下の湿度が高いと床板の裏側にカビが発生します。カビが発生すると、床板の隙間から1階にカビの臭いが漏れてきて、健康被害につながったり、押し入れがカビやすくなったりします。
築浅のお家は気密性が高く、基礎(通気)パッキンで空気を取り入れてるといっても滞留してしまうことがあります。そのため、大引きなど木部にカビの発生も少なくありません。
・シロアリ被害の有無
普段見える場所にシロアリはいません。そのため、目に見える痕跡を探してください。上の写真は蟻道(ぎどう)と呼ばれるシロアリの通り道です。地面から上の木部に向かって蟻道があり、その先は食べながら進んでいきます。
そうなると木がスカスカになり、叩くと軽い音がしたり、触ると崩れてしまいます。
・基礎コンクリートのひび割れ
基礎コンクリートのひび割れはお家の耐震に関わる重要な場所です。通気口の角は割れてきやすい部分ですが、地震などのダメージがどんどん蓄積するため注意が必要です。
正確な診断のためには、クラックスケールを用いて幅を1個1個測ってください。幅0.3mm以上、深さ5mm以上のクラックが「構造クラック」と呼ばれる補修をしたほうが良いと推奨されるものになります。
・断熱材の状態
断熱材の有無や、落ちている箇所がないか確認をしてください。グラスウールの断熱材は湿気を吸うと垂れさがってしまうことが多いため、そういう箇所があれば補修や交換が必要になります。
・配管の水漏れ
配管(給水管・排水管)から水漏れがないかを確認してください。漏水があると上の写真のように床下に水たまりができ、基礎の劣化や木部の腐り、カビの発生につながります。
また、湿った木を好むシロアリにも狙われる可能性も高くなるため、適切な対処が必要となります。
・床束・束石の劣化
最近のお家では基礎コンクリートの耐圧版(床部分)に鋼鉄束を置き、床の荷重を支えますが、築20年以降のお家では床束と束石の組み合わせで支えています。
しかし、土壌成分や雨水によってボロボロになる「針状結晶」という症状になる場合があります。こうなってしまうと束石に荷重がかかっても支えきれずに浮いた状態になってしまいます。
床下リフォームが必要な9つの理由
1.基礎の劣化を防止
築年数が経った家では、基礎コンクリートが地震や経年劣化などからして、ひび割れ(クラック)などの不具合が生じます。
クラックは家の耐久性を大きく下げるだけでなく、そこから湿気が入り込むことでシロアリの発生を招きます。
基礎コンクリートの外側にはモルタルが塗られているため、庭などから基礎を見るだけではコンクリートが受けている本当のダメージがわかりません。
そのため床下リフォームを定期的におこない、内側から基礎コンクリートの状態を確認する必要があるのです。
2.シロアリ被害を予防
シロアリは木を好んで食べます。木造住宅は木がふんだんに使われているので、シロアリにとってはごちそうです。また、シロアリは湿気の多い場所を好む性質があるので、ジメジメした床下は天国のような環境です。
シロアリに木を食べられてしまうと、家の構造体である土台や柱、梁が弱くなり、家の強度が大きく落ちてしまいます。
構造体以外にも木は使われており、床や壁の木組みもシロアリの被害にも影響があります。床の木組みを食べられてしまうと床が抜ける恐れがあるので、注意が必要です。
シロアリは家にとって天敵なので、床下リフォーム業者に頼んで、防アリ対策をおこないましょう。
3.木部の構造体が腐るのを予防
木部がダメージを受ける原因は、シロアリだけではありません。
木には水を吸収する性質があり、年数が経つにつれ、どんどん脆くなっていきます。湿気が多い場所と少ない場所では、木の劣化速度が明らかに異なります。
数日で腐ることはないものの、床下リフォーム業者に頼んで防湿・調湿対策をおこないましょう。
4.カビ被害を予防
湿度が高く、風通しが悪いとカビが発生しやすくなります。床下を開けて、ツンとした刺激臭を感じたことはないでしょうか?
あの臭いはカビが原因です。
床下でカビが発生すれば、やがて生活している部屋まで臭いが届いてくる可能性があります。また、カビはぜんそくやアトピー、結膜炎などの原因にもなります。
カビを予防するには、湿度の上昇を防ぐか、風通しを良くすることが重要です。床下には換気口がありますが、梅雨のときなど、外気の湿度が高かったら意味がありません。
根本から問題を解決するには、調湿マットを敷くのが一番です。
調湿マットによっては、効果が20年以上持続するのもあるので、気になる人は床下リフォーム業者に相談してみましょう。
5.水道管やガス管の老朽化による水漏れ・ガス漏れを予防
床下には水道管やガス管が敷設されています。湿気が多い床下は水分量を多く含んでいるので、配管に影響が出る可能性があります。
影響が出るのは鉄でできた配管です。
鉄管はひと昔前まで水道管として頻繁に使用されていましたが、サビによる経年劣化で脆くなりやすいという致命的な欠陥がありました。
脆くなった鉄管を放置すると水漏れが発生し、床下に湿気が溜まってしまいます。すでにご紹介したように、床下に湿気が溜まると、シロアリやカビの発生を招きます。
また、ガスが漏れれば、引火して大事故につながる可能性があります。
床下リフォームで水道管やガス管の点検・交換をおこなうことをおすすめします。
6.点検口を設置
点検口がないと、床下に潜ることはできません。床下に点検口があることで、基礎や水道管の状態を確認することができるのです。
そのため点検口がない家は、早急に床下リフォームで設置する必要があります。
7.床下収納を設置
床下点検口を設ける際は、収納スペースとして活用することをおすすめします。
各メーカーが床下収納庫を販売しているので、効率よく収納するため、購入を検討してみましょう。
8.床のへこみを修繕
湿気によって木が弱ることで、床がへこんでしまう場合があります。
その状態を長期間放置していると、床が抜けてしまったり、修繕箇所が大きくなってしまったりします。
先述の点検口がすでに設置されている場合、簡易的な木部の補修ができます。
9.断熱材の敷設
古くに建てられた家では、床に断熱材が敷かれていないケースがあります。
特に冬場は、床下に冷気が入り込むことで床が冷え、足元が冷たくなってしまいます。
床下リフォームで断熱材を敷設することにより、冬でも靴下なしで家の中を歩き回ることができます。
床下点検で長く住める家に
冒頭では、床下リフォームを内蔵の不具合にたとえました。
たとえば、心臓に疾患があっても、外見的には何も変わらないですよね。でも、疾患を放置していれば、命を落とす可能性だってありえます。
床下の不具合も同じです。
外から不具合を確認することができなくても、基礎コンクリートにクラックが入っていれば、家の耐久性が大きく落ちてしまいます。
だからこそ、家を長持ちさせるためにまずは現状把握として床下点検をおこなう必要があるのです。
築10年以上で、まだ床下点検をおこなっていない方は、一度相談してみてください。