床下点検で白い雪のようなフワフワした結晶を見たことがありませんか?
このページをご覧いただいているということは、もしかしたらそんな「針状結晶」があり、困っている方かもしれません。
一見きれいなこの針状結晶ですが、放っておくと重大な影響を及ぼし、床下環境がとんでもないことになります。
この記事では、針状結晶の説明や原因、対応についてご紹介しています。本当に危険な症状となる場合が多いので、ぜひ最後までご覧ください。
床下の針状結晶とは?
針状結晶とは、こちらのような写真の白いフワフワしたもののことを言います。
こちらは床下にある床束(束柱)を支える束石ですが、針状結晶により形がほとんど残っていません。症状が進むとさらに崩壊し、浮いた状態にもなってしまう怖い現象なのです。
針状結晶の症状が出ているお家では、床下の至る箇所でコンクリートがボロボロになることが多いのですが、そもそも針状結晶になる原因は何なのでしょうか。
原因や原理について
お家の土壌成分は立地場所や環境で大幅に異なります。その中でも、「硫酸塩」の含有量が多い場所があります。そんな場所では、雨水に溶けた「硫化イオン」が土壌に浸透し、コンクリートが吸い上げながら結晶化を起こします。
そうすると「硫酸ナトリウム(Na2SO4・10HO)」となり、結晶化する時に、コンクリート素材の内側で微細破壊を起こして強度を著しく落としてしまうのです。
- 土壌の「硫酸塩」含有量の多い立地
- 雨水に「硫化イオン」が溶け、土壌へ染み込む
- 束石や内基礎などのコンクリート表面に「硫酸ナトリウム」が析出することにより表面を微細破壊する。
【要注意】今後どうなっていくのか画像で確認!
以下の写真は当社で床下点検した際に、同じお家、同じ日付で撮った写真になります。こちらのお家では床下の全体的に針状結晶が進んでいますが、進行のスピードが少しずつ違っていました。
そのため、同じ束石の写真ではないですが、針状結晶がどのように段階的に進んでいくのかはわかりやすいと思います。
- 束石の右下部分に針状結晶が見られます。
- 下の方から進行が進み、少しずつ破壊、崩落させています。
- 針状結晶は全体に進み、左・右に亀裂が見られ強度が著しく低下しています。
- 束石で一部分支えられているように見えますが、実際は浮いた状態となっており、危険な状態です。
このように、進行が進んでいくと床束(束柱)は意味をなさないものとなり、床や根太の荷重が載っていないようになります。
この症状がお家全体で発生していたため早急な対策が必要となりました。
針状結晶への対策は?
束石に針状結晶がある場合は、上のような対策をしてあげるとよいでしょう。
針状結晶が出て、束石が破壊されている場合は、隣に鋼鉄製の束を使用しますが、その下の部分が肝となります。束石には防水塗料を施し、その下にはさらに防湿シートを敷きます。
そうすることで、地面からの水分を吸い上げることがなくなり、束石本来の強さが発揮できるからです。
- 鋼鉄製の束柱を使用
- 束石に防水塗料をしっかり塗って地面からの吸い上げを防ぐ
- 束石の下には防湿シートを敷き、束石に水分を吸収させないようにする
ただ、軽微な針状結晶で束石に少し結晶が進んでいる位であれば、防水塗料の塗布と、ジャッキアップして防水シートを束石の下に敷くことで対策ができることもあります。
基礎コンクリートに針状結晶がある場合も要注意!
針状結晶は束石以外にも基礎コンクリートに発生することもあります。こちらの写真も上の写真と同じお家ですが、内基礎にもかなりの結晶化が見られ、コンクリートを破壊していました。
原因や症状は束石の場合と同じですが、内基礎コンクリートの場合は建物の負荷が非常にかかる場所のため、これだけコンクリートを破壊し、そぎ落としてしまうと耐久力や強度が著しく低下し、最悪の場合は倒壊の恐れがあります。
この場合は、基礎コンクリートの保護、強化のために「ハイブリット工法」が必要となります。
ハイブリット工法は鋼鉄の5倍の引張強度を持つ「アラミド繊維シート」と防水性のある「エポキシ樹脂」を組み合わせることにより、基礎コンクリート本来の強度よりも強くすることができます。
高速道路のトンネル補強や橋脚補強などの公共事業でも採用されるほどのしっかりとした工法です。これだけ弱った基礎であれば補強は間違いなく必要となってきます。
施工の場合はしっかりと原因・対策を検討してからとなりますが、いいかげんな判断でモルタルを塗るだけなど下手に対策をしないようご注意ください。
まとめ
あまり知られていない床下の「針状結晶」についてご紹介しました。基礎補強工事が専門の当社においても、危険な症状のベスト3に入るくらい怖い症状です。
まだ大丈夫と安易な判断はせず、適切な対策をとってくださいね。
針状結晶とは、床下にあるフワフワとした雪のようなもの。
これは土壌成分の「硫酸塩」と雨水に溶けた成分の「硫化イオン」がコンクリート内部を通ることにより結晶化された「硫酸ナトリウム」が析出される。これによりコンクリートの組織が微細破壊され、強度不足に陥る。
進行はどんどん進み、束柱は浮いた状態となることも。早急に対処が必要となる。
第2章 針状結晶への対策は?
針状結晶の症状が進んでいる場合は、以下の方法で対策を行う。また、劣化が軽微なようであれば、束石の防水処理と防湿シート敷設で間に合うこともある。
- 鋼鉄製の束柱を使用
- 束石に防水塗料を塗布
- 束石の下には防湿シートを敷設
束石以外にも内基礎コンクリートにも針状結晶の症状が現れる。その場合には、基礎の防水をすることによる症状の悪化阻止と、強度アップのため「ハイブリット工法」が望ましい。
ハイブリット工法で使用されるアラミド繊維、エポキシ樹脂の組み合わせは、公共事業で使用される安心の工法です。
進行が進む前に改めて床下の状況確認をすることも大事です。